Gallery Jin Annex 播磨みどり「America」

2/29(金) - 3/9(日) 3/3(月)休廊 12:00 - 19:00(最終日17:00まで)
展示風景
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この作品はヨーゼフ・ボイスの1974年のパフォーマンス作品” I like America andAmerica likes me”にヒントを得、自分の中の「アメリカ」をもとに作られる。

旅行先のベルリンで入った美術館にヨーゼフ・ボイスの部屋があった。奥の一面に大きく投影された映像には、金網で閉じられたギャラリーの内部でフェルトに包まり、杖を片手にしたボイスとコヨーテとのコミュニケーションの様子が映されていた。作品のモチーフや素材、意図、メッセージ、それが今映写されている空間、それを記録という形で事後的に今ここで観ている自分自身を含め、作品と自分との間のある絶対的な距離と共にその映像にしばらく引き込まれた。

何より異国で物理的なそして心理的な距離の下、「United States」でない「America」という言葉を目にし、その距離感に覚えがあった。「アメリカ」は私にとって長い間遠い外国であり、現在は生活の場である。自分にとって「中でもない外でもない旅先のある地点」からアメリカを想った時に、複雑で混乱した形の自分の中のアメリカが立ち現れた。

私の生まれ育った日本は戦後、政治的、経済的、文化的にその多くをアメリカに追うことで民主化を図り、アメリカという概念は理想化された形で、人々のライフスタイルを始め、価値観や美意識等にまで影響を及ぼした。世界的に見てもアメリカはグローバリズムという戦略の下に中心という概念と密接に結びつくことで、多くの国々を先導した。その過程で掲げられ、輸出された自由・平等・民主主義といった概念が、政治的・経済的な戦略として利用され始め、中心−周縁という概念がそのからくりを露呈することで理論上で一旦解体した後も、アメリカはそのような概念のゴーストと共に心理的に、またアメリカン・グローバライゼーションの下に作られた風景や日常として世界のあちこちに物理的に存在し続けている。

この作品は、身体レベルでの個人的な中心−周縁という実感を、イデオロギーとしての中心−周縁という構造と、「アメリカ」という一つの概念に重ねることで自分の中の「アメリカ」を、構造的に、また心理的に確認する為に作られる。

作品と私(=鑑賞者)との間の物理的、心理的、時間的な距離

中に居ながら同時に外部でもある、外国人としての暮らし

外部が中心を作り出す構図 そしてそれがたえず入れ替わっていくこと そういった分裂した要素を緩やかにリンクさせ、作品とする。
Gallery Jin Projects
2/29(火) - 3/16(日) 月・火休廊 12:00 - 19:00(最終日17:00まで)
関連リンク
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