武弓真実個展「オ真実」

日常生活の中では見ようとしていないだけで、意識して少し視線をずらしてみれば見えてくるもの、何処かに存在しているかもしれない空間や生き物達を描きたい。

例えば、葉の裏に住む虫。葉を一枚めくってみればそこには虫達の生活の営みやコミュニティがあり、ひとつの世界を確認することができる。
そんな風に、きっと葉の裏のひとつひとつにはそれぞれ異なる世界が広がっているのではないか。けれど、私には地球上に存在する全ての植物の葉の裏を一枚ずつめくって確かめることはできない。もしかしたら、その中のひとつに想像することさえもできないような世界が存在しているかもしれない。そんなことを思うと、私は少しの恐怖と希望を覚える。

そして、描きたいと思う。描くことによってそこに少しでも近づけたら、と。
そんな不確かな世界を求め描くという行為は、私にとって一種の祈りと逃避であると日々の制作の中で感じている。