BORDER LESS -憶想を結ぶ、ふたりの布-
皆川百合( MINAGAWA YURI ) ・単 璐薇 (LUWEI SHAN)

4/4(日)プレオープン 
4/5(月)休廊
4/6(火)〜4/11(日) 12:00~19:00 最終日17:00 迄

本展示は、技法の異なる染織分野における二人の作品の結び目である。
両者の作品が、展示を通じて結ばれ、生み出される世界はどんなものだろうか。
彼女たちの共通する表現媒体である“布”を通じて人と人が繋がっていく、そんな「borderless」な世界を感じていただけたら幸いである。

展覧会中のブログ

略歴

皆川百合
Born in Nara Jp,1992.
大阪芸術大学工芸科染織専攻を卒業し、京都芸術大学総合造形領域を修了。
その後、装飾研究の一環としてMD兼ランジェリーデザイナーとして勤務。
現在は東京藝術大学美術研究科工芸領域染織研究室博士課程に在籍中。

染め表現のエポックメイキングを目指し、制作動機である「飾る精神」を主に、
制約から生まれる染めの計画性「doing」と偶然性「being」 の結合表現(バイロジック)を独自の技法で、
布に色や模様を装飾した作品を制作する「Dyeing Decorator」として活動。
2019年ではFENDIファータブレットコンペディションの優秀賞者としてミラノコレクションに招待されるなど領域に留まらない活動に取り組んでいる。

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単 璐薇
Born in LiaoNing Shenyang Cn,1991.

2014年魯迅美術学院染織服装芸術デザイン学科染織専攻を卒業し、同年度来日。
2018年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科テキスタイル専攻を修了。
2019から2020年まで東京藝術大学美術研究科染織研究室に研究生として在籍。
2021年東京藝術大学美術研究科染織研究室に入学。

「五感の記憶」をテーマに、「テキスタイル」「自分」「社会」これら3つのキーワードを軸に作品を制作している。制作では、錆び染めと伝統的な織りを融合させた布を主体に、
町の残像のような誰にでも共感を呼び起こすモチーフを写し、加えて偶然により表出した染料の模様を重ねていく。作品を通じて、鑑賞者が個々の記憶を呼び覚まし、当時の場所や思い出、その場所の匂いに至るまで、喚起することができる作品を目指す。

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2020年、グローバル化が進む今日では、人種や性別、国境を超え、多様な人々の存在が受け入れられつつある。あらゆる境界が見直される中、突如として新型コロナウイルスにより、社会の状況は大きく変動した。海外では国境閉鎖が行われ、
人々に対しては、ソーシャルディスタンスとして身体的な距離が保たれ、私達の生活は新たに現れた境界(ボーダー)によって分裂された。

そんな混沌とした社会情勢の中で、本展覧会の出展作家である皆川は、東京藝術大学の博士課程に入学した。約一年のオンラインによるコミュニケーションの時間や場所を問わない繋がりに奇妙な感覚を覚えたという。2020年におけるオンラインのコミュニケーションは、新型コロナウイルスによって分断された二人の作家の世界を結び、
ボーダレスにする唯一の手段だったように思う。互いの身体が断絶された状況下で、両者の世界が結ばれ繋がり合うことのできた喜びや興奮、同時に感じた奇妙な感覚。
それが、オンラインという一つの手段が可能にした「borderless(ボーダーレス)」の体験である。
この体験をもとに、今回「borderless」を主題とした展覧会を企画するはこびとなった。

 「borderless」とは辞書的には境界や国境がないことを指す言葉である。
だが、本展覧会ではこの言葉を辞書的な意味だけではなく、
各々の染織分野的考察からアプローチした作品が出会う(結ばれる)場としての展覧会をめざした。
さらに「結び」には様々な伝承があり、語源を辿ると「陰陽相対的なものが和合して新しい活動を起す」といわれている。これは、皆川が研究する「バイロジック(対称)表現」の思想と通ずるものがある。また「結び」には「象徴的用途」として「記憶・象徴・標識」が主にあるとされ、これは単 璐薇が研究する「五感の記憶」にも通じている。

本展示は、技法の異なる染織分野における二人の作品の結び目である。
両者の作品が、展示を通じて結ばれ、生み出される世界はどんなものだろうか。
彼女たちの共通する表現媒体である“布”を通じて人と人が繋がっていく、そんな「borderless」な世界を感じていただけたら幸いである。