津田大介彫刻展「Shout!」

9/20(火) - 9/25(日) 12:00 - 19:00(最終日17:00まで)
展示風景
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学生生活を終え、一般企業に勤めながら作品制作をつづける日々で感じてきたことを凝縮し、かたちにしたのが今回の『Shout!』展です。

私は彫刻を続けるためには安定した生活をベースにしなくてはと考え、かれこれ2度の転職、今は林業を生業としています。

そんな生きるために働く日々は、楽しいことがない訳ではないが、企業に勤めることは、窮屈で、理不尽なことも多く、辛いものもありました。(企業人としては失格か?)でも生きるために働くことは、誰にも逃れられない宿命のようなものであり、その怒りや憤り、情動、我慢 しがらみは常に付いて回る犬のようなものだと思います。

さて今回の『Shout!』展のメインである1階展示スペースの作品群は、それらの宿命を表す3体像となっています。以前より対をなす阿吽像に惹かれる思いがあったことから、激しく咆哮する像『Shout』、歯を食いしばる憤怒像『Silence』、の2体を構想し制作しました。また、その阿吽像を眺める自身をイメージし、その関係に踏み込むような対として無気力に眺める像『Shell』を着想しました。

『Silence』はそれらの構想から最初に制作した像です。その頃はちょうど最初の仕事を辞め、量産メーカーで営業職をしていました。そんなことから三体の中では最も自身の心情をダイレクトに込めた作品といえます。営業回りと事務仕事に追われ、終わりのない、止まることない歯車でありながら、表面上は笑顔で過ごすそんな矛盾との戦いの日々でした。そのストレス、しがらみ、怒り、辛苦を元々が持つ材の量感を残しつつ、膨らみあがるよう彫り、刻みつけた像といえます。とにかく原始的な荒々しい像とするために、大きなかたちは3種の斧を用いて割り彫っていきました。

次に『Shout』は『Silence』の持つ鬱屈とした負のエネルギーの風船が膨らみ切り破裂する、解放、放出するイメージから生まれました。激しい造形、奔放な表現をしたいと思い、一本の材を解体し組み上げる方法を考えました。多くの部分は木が持つ性質が現れる剥ぎ割りで解体し、組み上げは材同士を丸棒の木材でクギのように用いました。木が持つ性質(曲がりや反り)、量感に対して出来るだけ手数を入れずにかたちを決め込み、どれだけ激しい造形ができるかを試した作品といえます。

『Shell』は2体の造形方法のミックスしたものといえます。一本の材を解体組み上げるところは『Shout』に近いですが、像の持つ意味が全く異なっているため、激しいというよりタイトルとおりの虚脱状態を感じるような造形といえます。ただ、今を傍観、諦観し、1対の像の成れの果て、もしくは心縛りを開放しつくした抜け殻状態であります。

このように3体の像は構成されひとつの空間で対比されています。なお、2階はこの5年間の小作品を展示しています。

樵木彫人 津田大介
略歴

1980年 静岡県三島市に生まれる
2000年 日本大学芸術学部美術学科彫刻コース 入学
2003年 グループ展『Sculpture』 /練馬区立美術館市民ギャラリー
2004年 日本大学芸術学部美術学科彫刻コース 卒業
2004年 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術 入学
2004年 木彫フォークアートおおや 銀賞(買い上げ)
2006年 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術 修了
2011年 クラフトとスモールアート大集合 /ギャラリーKingyo
2011年 宮崎国際現代彫刻展・空港展 出展
2011年 19会展示会 (埼玉第一・開智高校合同同窓会展覧会)/プラザノース(埼玉)