小松俊介 石彫展 「石をひらく」

2022年 7/31 (日) ー 8/6(土)
12:00~19:00 最終日17:00迄

展覧会中のブログ

長らくというほどではありませんが、私は石を彫って作品を制作してきました。私にとって「石を彫る」とは、鑿(ノミ)と鎚(ツチ)で石を叩きながら形を見つけることを指します。長い時間をかけてひとつの石と向き合い、自分自身の形を探す制作を重ねてきました。そのような意味で、本展において石は彫っていません。今回は、これまでの系譜にある自分と石の関係から離れ、もっと広い視点から石を捉え直す試みをしています。











昔から石は、堅牢な素材として建築や護岸など、私たちの身の回りで実用的に活用されるほか、庭園や墓跡など精神的な憑代として用いられてきました。彫刻においてもこの両方の側面があることは言うまでもありません。特に石自体への信仰や精神性は、地球誕生以降の生成過程や途方もない時間に自然への畏敬の念が重なることから生まれるのだろうと思います。最近、宇宙や地球という大きなスケールで物事を考え直す機会がありました。子どもの図鑑や絵本を開いて宇宙や時間について思い巡らすのは大人になっても愉しいものです。私たちは、「地球誕生は何年前か?」と聞かれれば、「およそ46億年」と答えられますが、この46億年を体感として捉えることはとても困難なことです。では、46億年前の地球誕生の日を1月1日として、現在までを1年間に圧縮した場合、人類が誕生したのは何月何日になるでしょう。小学館の図鑑によると、人類誕生は12月31日の12時35分のことで、ホモ・サピエンスの誕生は、23時37分となるそうです。このことを知ると、46億年が如何にとんでもない時間か想像することができるでしょう。

さて、当たり前のことですが、石は割れます。叩いて割れるものは石以外にもたくさんありますが、石が割れる瞬間は他のものと違って“面白く”感じます。この面白さはどこからくるのか?というのが今回の展覧会の出発点になります。自然の石は、人智を超えた時間を内包します。石が割れた断面はその瞬間にはじめて空気に触れることになります。つまり、石が割れた瞬間に地球の記憶の断片が顔を出し、途方もない時間に出会うことができるのです。一つひとつの石は小さいですが、石をひらいたその断面に大きな広がりを共有できたら幸いです。

小松俊介